最高裁判所第三小法廷 昭和26年(オ)315号 判決 1952年10月07日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人等の負担とする。
理由
本件上告理由は、末尾に添えた別紙記載のとおりであつて、これに対する当裁判所の判断は、次のとおりである。
上告理由第一点について。
借家法第一条ノ二にいわゆる正当事由がある場合とは、必ずしも賃貸人において賃貸建物を自ら使用することを必要とする場合に限らないことはもちろんであつて、原審認定の事実によれば、被上告人が本件賃貸借の更新の拒絶をなすにつき正当事由ありと認めるに十分である。所論は、右と異る独自の見解に立ち原審の正当な判断を攻撃するものであつて、理由がない。
上告理由第二点について。
所論の中、原審が正当事由の有無の判断にあたり、賃借人たる上告人側の事情を考慮しなかつたのは不当であると主張する点については、原審認定の事実によれば正当事由ありと認むべきことは前記の通りであつて、たとい所論のような事情があつたとしても、右判断に消長を及ぼすものではないから、所論は結局理由がなく、その他の論旨は、「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」(昭和二五年五月四日法律一三八号)一号ないし三号のいずれにも該当せず、又同法にいわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものとも認められない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 井上登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 本村善太郎)